なんか言いたくなったこと

アイドルマスターを中心に、余計なことを書く。

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ウサギのジャンプは月まで届く

ミステリー好きにもオススメ!したい一作。
ミステリーの解説なんて興醒めでいたたまれないが、せっかくなので書いてみた。
という訳で、ミステリー(だと私は思っている動画)のネタバレしているので注意してください。

ウサギのジャンプは月まで届く【Novelsm@ster】 ひゅんP

先日CDデビューも決まったばかりのアイドル・安部菜々が主役の動画。
彼女の特徴、それは

年齢・永遠の17歳
出身地・ウサミン星

この2点である。
電波系アイドルと称される彼女の個性は、ニートや邪気眼アイドルと並んでも遜色のない色物設定だ。
私も小倉優子とか大好きでした(電波設定というより顔が好きだったのですが)。


安部菜々は如何にして安部菜々を止めてウサミンを愛するようになったか。
個人的には見終わった後、「すごくミステリーしてるな」と感じた。
私が推理小説好きだからかもしれないが、せっかくミステリー視点をもったのでミステリー推しで書こう。

物語は、
現在:トップアイドルになった安部菜々がPに向けたセリフ
過去:安部菜々の回想として、アイドルを目指す娘とその母親の会話

のふたつの時間を交互に繰り返すことで構成されている。そして、
「安部菜々とは誰なのか?」(フーダニット)
「どのようにして安部菜々となったのか?」(ハウダニット)
「なぜ彼女は安部菜々になったのか?」(ホワイダニット)

これらが非常によくできたミステリーであり、
若干ハウダニットが弱いかもしれないが、そこは肝となる叙述トリックに大いに役立てられている。
叙述ですよ、叙述!

叙述としてわかりやすいのは前半の母娘の会話シーンだろうか。
usamin5.png
トップアイドルとなった安部菜々、彼女がPに過去を打ち明ける形で回想が始まる。

usamin2.png
上が娘の、下が母親のセリフ。微笑ましい母娘の会話劇に見える。
まず「アイドル・安部菜々」を出してから、アイドルを目指す娘と見守る母親の会話を見せることで、
ごく自然に「アイドル=娘=安部菜々」という印象を持たせている。
年齢がネタになっているからにはアイドル=母親を疑っても良いはずなのに、
母親という立場、アイドルへの思いなどの描写がその疑念を押さえ込んでいる。
…叙述推ししたいがため多少大げさに表現しているが、
秘密をいかに秘密だと思わせないか、違和感を抱かない程度の伏線なども含めてミステリーらしいと考えている。
「安部菜々とは誰なのか?」
これは物語最大の秘密であるからこそ、そもそも秘密であることが明かされない。
明言されない謎やトリックに気づくのがまた、ミステリーの楽しいのひとつですよね!
年齢詐称どころか子持ち電波系アイドルという設定自体がショッキングなので
気づかなくて当然な気もするが、
ノベマスに詳しくない私でも子持ちアイドルというネタは見たことがあるので、
決して斬新というほどでもないはずだ。とはいえ、私は気持ちよく騙されましたw

また、特にうまいと思うのが3:37前後のシーン。
usamin6.png
娘が母親に将来の心配をされたシーンから、レッスン風景へと場面は転換される。
ほとんどの視聴者(というか私)は、安部菜々のセリフも鑑みて
「娘(=安部菜々)は母親に隠れてレッスンを受けているのか」と捉えただろう。

usamin1.png
お馴染みの年齢ネタが笑いと涙を誘い、続くアイドルとしてのステップアップにより深みをもたせる。
「アイドル活動が楽しかった」、そういう彼女に胸を打たれることもあるだろう。
しかしこれは娘ではなく母親の視点なのだ。
しかも母親は娘の“代わり”にアイドルとなりながら、
自分自身がアイドル活動を楽しんでしまうという皮肉なシーンでもあり、
視聴者は娘の奮闘記を見ていると思い込み、そうとは知らずに母親の懺悔を聞かされているのだ。
一見笑いや感動を誘うのに、真実を知れば意味が反転してしまうような作りが、まさに叙述トリック。
そこかしこに挿入された伏線に驚くために、2回目はまた違った視点から楽しめるだろう
叙述は2回目が楽しいですよね!

「どのようにして安部菜々となったのか?」を有効活用して、「ウサミン」(娘)設定の価値を高めている。
物語やドラマとしての面白さとミステリーとしての面白さが両立されているのが
本動画の素晴らしいところだ。
ミステリーではなく人間ドラマの意味でも大変素晴らしかったのだが、
その感動を高めているのがトリックである、ということもまた疑いようがないだろう。

ただし「真実がわかれば意味が反転する作り」ということで、
叙述とあれば再読して伏線を楽しむのが優等生な読者の姿勢だと考える私としても、
2週目に威力を発揮する会話の残酷さは思いがけないものだった。
usamin3.png
usamin4.png
動画の入りにおかれた、電波系と呼ばれるようなアイドルを目指す娘とそれを諌める母親の会話である。
娘の気持ちを分かってあげられないまま永遠の別れとなってしまった母親の悲劇、そういう面もあるが、
よりつらいのは、母親である安部菜々自身が「非現実的だ」と罵ったウサミンという設定の中で
生きることを選んでしまった…という現在への皮肉でもある。
死んだ娘の代わりに母親がウサミンになる、ウサミンやアイドル以上に、安部菜々の現実は非現実的だ。
実際、安部菜々は何度も現在の自分が「夢」「偽物」だ、と発言している。

usamin7.png
母親がいくら娘の夢を叶えようとしたところで、そこに生まれるのは娘の幸せではなく本人の感情だけだ。
母親は娘を理解したいと願い、娘の代わりに「ウサミン」としてトップアイドルとなった。
それは娘を幸せにする義務を果たしたいという母親の痛切な祈りでもあったのだろう。
それなのに安部菜々はアイドルの喜びに目覚め、
「ウサミン」として得た名声が自分のものではないことに苦しみ、
そうして娘のために生きられない自分にもショックを受けている。
このショックは「死んだ娘を幸せにする」という義務を怠る罪悪感になるのかもしれない。

usamin8.png
安部菜々の懺悔に応えたPの言葉は、
安部菜々と視聴者の両方に残酷な現実と叙述トリックを明かすものだ。
ここもまた、トリックと物語が不可分に両立されたシーンである。

あと、謎というか明かされなかった二人の結末についてもひとつ。
「ウサミン」の得たものが安部菜々のものではないように、安部菜々を愛するPも彼女の悲劇になる。
母親の得たものは、本来娘が得るはずのもの。安部菜々はそう考えている。
であればPもまた、彼女のものではないはずだ。
もちろん現実として安部菜々は娘ではないので、安部菜々の得たものは母親のものである。
しかしそれが受け入れられない。たとえ偽りだらけでも、それも母親の愛と贖罪なのだ。
彼女が「ウサミン」のPとの仲に消極的になるのはそういう理由もあるだろう。
最後に安部菜々は「月面コンサートを叶えるまで待ってほしい」と伝えるが、
個人的には遠回しなお断りに近いと考えている。
安部菜々はもともと「ウサミン」を夢だと否定した母親なのだから、
月面コンサートなど「ウサミン」以上にありえない夢だとわかっている。
ただ「娘の夢を叶えるまでPに付き合ってほしい」という願いだけが、
「ウサミン」のルールに反しない唯一叶えられる安部菜々自身の願いだ。
Pと結ばれないことはつらいかもしれないが、
その苦しみは安部菜々が娘を幸せにする義務を果たしている証明でもある。
結ばれないままPと一生を共にすることで、
秘密を分け合う共犯者がいることも安部菜々には救いになるのかもしれない。
まあ、Pがどこまで付き合ってくれるのかわからないが。


蛇足気味のまとめ。
そもそも安部菜々や電波系アイドルのあり方について、ここまで深く考えたことがあるだろうか。
私は上述のとおり小倉優子が好きだが、当然ながら彼女が演じていることは分かっていたし、
それについて設定で売り出すメリットをいくつか考えたことはあるけれど、
彼女の意志で設定を作った、という想像はしたことがなかった。
安部菜々とウサミンを分けて考えた結果を、コメディではなくシリアスな物語として
ここまで巧みに使いこなした作品は初めて見た。

安部菜々とウサミン、電波系アイドルの背後にあるドラマ。
ごく当たり前に受け入れているものに改めて疑問を持つところもミステリー感というか、
「日常の謎ってこんな感じなのかな」と思った。
ぐぐった際に、『日常の謎の謎』辻真先|日常の謎|webメフィストという話も読んだので、
まあ、日常の謎みたいなものでよいのだろう。どうだろうな。
単に私が好きな話だったというだけかも。


ストーリーもすごく良かったけれど、長くなるのでほとんど書けなかったのが悔しい。
とにかく、ミステリーとしてもドラマとしても面白い動画。
こちらを見て、ミステリー動画(推理小説みたいな感じ)だなーと思ったら、
ひゅんPは他にミステリーと銘打った動画も投稿されているみたいで納得というか安心した。


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  1. 2013/04/06(土) 21:30:24|
  2. ニコマス(テキスト系)
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